私は、ただ、思ったことを言っただけ。 それが魔女の怒りに触れ、呪われた。 けれど、呪われても私は平気だった。 魔女の呪いは強力で、食べれるものはお菓子ばかりに制限されたけれど、その呪いは私だけにかけられたものだったから平気だった。 これが他の誰までかかるようだったら、私は笑っていられなかった。 王女という立場だからこそ、私は呪いをかけられても、他の皆と変わらず、生きて来られた。 成長するにつれて、王女だからこそ、いつまでも甘んじていられなかった。 『……貴方が、魔女ディアガン?』 『あぁ? そーだけど、どちらサマ?』 『忘れてしまったの、貴方が呪いをかけたバカ正直な王女を』 『……呪いィ?』 『……はぁ、あのオバサン、そんなコトをしてたのネェ』 『知らなかったの?』 『聞いてないわネェ。基本的に、呪いはかけた本人しか解けない。つまり、アタシにはムリ』 『そんな――』 『だから、解くためにはコレしかないわネェ』 心から愛してくれる人からのくちづけ――それが唯一の手段だった。 王女の私は人より貞淑には厳しく育てられたと思う。 だからこそ、言われた内容を理解できても、それを実際にするとなった時、私はとても混乱した。 後継ぎである私の相手は慎重に選ぶ必要があるから。 婚約はしていなかった。 もしかしたら、候補くらいはいたかもしれないけれど、私は知らないし、それより日々の勉強で頭はいっぱいだった。 「愛してくれる」なんて、私をそんな風に想ってくれる人がいるの? 分からなかった。 でも、いたとして――いたら、呪いを解くために唇を許す? その瞬間、嫌だと思った。 私のことを愛してくれているとしても、知らない人に、そんな風に触れて欲しくなかった。 そして、私は気付いた――他の誰でも嫌だと思ったのに、ただ一人だけ違ったことに。 気付いても、どうしようもなかったけど、それでも、どうしても諦められなくて。 臆病になって、何も言えなくて、そうしているうちに、側にいることさえできなくなって。 『呪いィ?』 望みを告げた私に、彼女は出会った頃と同じように顔をしかめて聞き返した。 『難しいかしら、やっぱり』 『できるけど、メンドいィ〜。これだけ大掛かりだと、時間かかるし、疲れる〜』 『……普段あれだけダラけているんだから、こんな時ぐらい頑張ったらどうなの』 『えぇ〜?』 一国を呑み込んだ緑の呪い。 何が起こるか分からない危険がある中、呪いの中核である私のところに来てくれそうな人は一人しかいない。 だって、私は知っている――あの人がこの国を大切に思ってくれていたことを。 私のために、くちづけすることはできなくても、この国のためなら、してくれる気がする。 ――ズルい女ね。 だって、これだと、目覚めても目覚めなくても、私は私の想いを殺さずに済むでしょう? ――自分の国より、相手の気持ちより、自分の恋を優先するなんて、なんてワガママな子。 どうせ、子どもだもの。 ――仕方のないオヒメサマね。拗ねてないで、さっさと大人になりなさい。 「……?」 「イライザ……っ」 ああ、そういうことなの。 「私ね、貴方のことが好きなの。ずっとずっと好きだったのよ」 間近にあった瞳の中で、私はにっこりと笑っていた。 それが、私の夢の終わり。 |
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