Web拍手SS集―12―

Long long ago…… 2




「よーし、皆、揃ったな!」
 満足げな笑みを浮かべて、バルトフェルドは一同を見回した。
 突然の召集に、面々の顔は不審がいっぱいだ。
 何かにはどんな召集を受けたのか、米神を引きつらせている人間もいる。
「あの、バルトフェルドさん?」
 キラが呼び出された者たちの代表であるかのように、ぎこちなく疑問を口にした。


「その格好は、いったい……?」


 バルトフェルドの奇抜な出で立ちはいつものことだが、今回のはやや趣きが違う。
 白い帽子を被り、黒いサングラスをかけ、その手には――何故か、メガホンがある。
 果てしなく、嫌な予感がキラたちの全身を貫いた。
「ちっちっちっ、ん〜、ダメだぞ〜」
 人差し指を軽く振り、バルトフェルドは怪しすぎるほどの笑顔で告げた。


「俺のことは監督と呼びたまえ!!」



 総勢19名の沈黙が重く部屋を満たす。



「……ナニ?」
「何だって?」
「カントク」
「あぁ、今、流行の!」
「いや、ラクス、それは韓国だから」
「ラクス様……天然?」
「ふむ、どうやら彼は形から入るタイプだね」
「貴方と同類ですわね」
「あ、あれが噂に名を聞く『砂漠の虎』だとっ?」
「あー、いや、最初からあんな感じだろ、あの人」
「レイ、ふざけているのか、あれ」
「いや、至って真剣だろう」
「嘘!?」
「いい大人なのに!?」
「なあ、スティング、監督って何?」
「自分で調べろ」
「かんとく……?」
「うーん、ステラに難しいかな?」
「……目元が緩んでいるわよ」



 ざわめく一同に、バルトフェルドはわざとらしい咳払いをした。


「あー、ダコスタくん。例のモノを」


「はい……」


 神妙な顔つきで、ダコスタは一人一人に、小冊子を渡していく。
 何か問おうとしても、力なく首を振り、聞いてくれるなと目で彼は訴えた。


 彼ら――特定の一部の人間は除いて――は小冊子のタイトルを見た瞬間、すべてを理解した。
 そして、これから起こることも。


「作戦開始は二時間後」


 バルトフェルドは晴れやかに宣言した。


「作戦コードネームは『Sleeping Beauty』!!」













 昔々、とある王国に王様とお妃様が住んでおりました。


「王様とお妃様だとよ。どう、奥さん?」
「……微妙ね」

「微妙って何で!?」
「私の方こそ、何で仮面をつけたままなのか訊きたいわね」
「え、ダメ?」
「……」


 ある日、その二人の間に王女が生まれました。


「これは、なんと、めでたい!」
「ええ、そうね」
「早速、国中を挙げて祝いをしよう!」
「ええ、そうね」
「……やる気ないのね」


 落ち込む王様はさておき、やることはやるお妃様はしっかりパーティーの準備を整えました。


 そして、パーティー当日。
 お城には、国中の人々が祝いに駆けつけ、王女の誕生を喜びました。
 その中には、パーティーに招待された十二人の魔法使いもおりました。

「この度は、王女のご誕生おめでとうございます」

「つきましては、この慶事を祝いまして、私たちから贈り物の魔法を王女様に差し上げたく存じます」

 王様とお妃様は快く承知しました。

「……っていうか、十二人って多くない?」
「え、そうかしら? 確か、この人数であっていたと思うんだけど」



 一人目の藍色の髪に碧い瞳の魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。

「……お、贈り物、贈り物って。カガリ、俺は何をすればいいんだ!?」
「え。えーと、確か、良いことを言えばいいんだよ。美点になるようなの」
「そ、そうか」


 一人目の黒髪に碧い瞳の魔法使いは王女に『誠実』を贈りました。

「……まあ、アスランだしな」
「え、何かいけなかったか!?」


 二人目の金髪に琥珀の瞳の魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「良いことって言ったらコレだろう!」


 二人目の金髪に琥珀の瞳の魔法使いは王女に『元気』を贈りました。


「カガリ……」
「何だよ、元気が一番なんだぞ!?」


 三人目の水色の髪と瞳の少女めいた魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「面倒臭ぇな。ホラ、コレでもやるよ」
「って、そこ!! サバイバルナイフなんか贈るな――ッ!!」
「ネオ、煩い」


 三人目の水色の髪と瞳の少女めいた魔法使いは王女に『近接格闘術』を贈りました。


「……うわ、ソレでいいのか」
「し、信じられん……ッ!」


 四人目の短い髪と鋭い瞳の魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「これは、俺が持っている中でも一番使い勝手いい奴なんだが」
「って、お前もか、スティング!! 赤ん坊に銃なんかいるか――ッ!!」
「煩ぇよ、ネオ」


 四人目の短い髪と鋭い瞳の魔法使いは王女に『射撃技能』を贈りました。


「……なぁ、マリュー、どんな娘になるんだ、コレで」
「えぇと、まあ、個性的よね」


 五人目の二つ括りの赤い髪の魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「えーと、私は何しようかな……」
「メイリン、普通でいいのよ、普通で! あって良いもので!」
「じゃあ」


 五人目の二つ括りの赤い髪の魔法使いは王女に『情報処理技能』を贈りました。


「メ、メイリン……」
「え、だって、あって良いものだよね!?」
「――えぇ、そうね、貴方にはそうよね」


 六人目の短く切った赤い髪の魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「ったく……もう、いいわ、こうなったら、私も!!」
「待て、ルナマリア」


 六人目の短く切った赤い髪の魔法使いは王女に『モビルスーツ技能』を贈りました。


「……待てと言っただろう」
「だって、今更、私一人がまともにやったって遅いじゃない」













 国中の人々が王女の誕生を祝う中、魔法使いたちの王女への贈り物は続いていました。


 七人目の金髪の白皙の容貌の魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「良いもの、か………………………………」
「沈黙長いし、でもって、何で、そこで自分の髪を見つめるのかしらね?」
「え、私、羨ましいよ? レイ、何のトリートメント使ってるのかなぁ。お姉ちゃん、知ってる?」


 七人目の金髪の白皙の容貌の魔法使いは王女に『キューティクルヘア』を贈りました。


「う、う〜ん……今までのと比べるとまとも、かしら」
「あ〜、いいなぁ。私にも、その魔法、かけてもらおうかな……」


 八人目の銀髪の怜悧な魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「ったく、どいつもこいつもなっとらん!」
「おお、気合い、入ってるね〜」
「バカにするな! 俺はきちんと贈るぞ!!」


 八人目の銀髪の怜悧な魔法使いは王女に『ブチ切れ』を贈りました。


「……」
「お前、何贈るつもりだったんだよ?」
「……」
「え、何? 『情熱』?」


 九人目の金髪に褐色の肌の魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「んじゃまぁ、俺は、オーソドックスに」


 九人目の金髪に褐色の肌の魔法使いは王女に『綺麗なものを愛する心』を贈りました。


「……何故だ!? 何故、お前だけがちゃんとした奴を贈れるんだ!?」
「って、俺に言われてもな〜」


 十人目の栗色の髪の朗らかな魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「贈り物の魔法って言ったら、こういうのでしょうに……」


 十人目の栗色の髪の朗らかな魔法使いは王女に『純真』を贈りました。


「おお、さすがミリアリア!」
「う、うむ……!」
「私は、何で出てこないかが不思議だわ」


 十一人目の薄紅色の髪に星飾りの魔法使いが王女の揺り籠に進み出ました。


「あたしが一番良いと思うのは……やっぱり、コレね!」


 十一人目の薄紅色の髪に星飾りの魔法使いは『歌って踊ること』を贈りました。


「ようやく、最後だな」
「ええ」


 そして、最後の十二人目の魔法使いが王女の揺り籠に進み出ようとした時でした。



「随分と楽しそうだねえ〜」



 突然、黒い煙が生じ、その中から、榛色の髪と紫の瞳の魔法使いが現れました。


「お、お前は!!」
 驚く王様に、榛色の髪と紫の瞳の魔法使いはニッコリと笑いかけました。
「僕は悲しいですよ、ムウさん。僕を除け者にするなんて」
「いや、俺はネオ」

「ム・ウ・さ・ん?」


 榛色の髪と紫の瞳の魔法使いは自分だけに招待状が届かなかったことに怒っていました。


「って、送らなかったのか、マリュー!?」
「いえ、私は送ったわ」
「ラ、ラミアス艦長……この話の場合、送らないのが正解です」
「送ったら話が成り立っていないぞ……」


 榛色の髪と紫の瞳の魔法使いはぐるりと辺りを見回し、王女の揺り籠を覗き込みました。


「……へぇ、贈り物の魔法ね。せっかくだから、僕も贈ってあげるよ」














 王女の誕生祝いのパーティーに招待されなかった魔法使いは静かに怒っていました。
 怒らすと最も恐ろしいとされる魔法使いです。
 他の魔法使いたちが止めるより早く、贈り物の魔法が唱えられていました。

「――この王女は、愛らしく無邪気で可憐に育ち……あ、でも、ラクスには負けるけどね! ……十六の年に、糸紡ぎの刺されて儚く散ることでしょう」

 榛色の髪と紫の瞳の魔法使いは王女に『呪い』を贈ったのです。


「……キラ、お前」
「一言、余計だったな」
「え、だって当然じゃない?」

 そして、榛色の髪と紫の瞳の魔法使いは煙と共に消え去りました。

「ああ、なんてことだ!」
「……キラ君の魔法の前の贈り物だけで、充分、呪いのような気もするけれどね」


 あまりのことに王様とお妃様は深く嘆き悲しみました。
 その時です。
 最後に残っていた桜色の髪に蒼い瞳の魔法使いが二人の前に進み出ました。


「どうぞ、ご安心なさって下さいな、お二人とも」
「呪いが解けるの?」
「いいえ、一度、かけられた魔法を解くことはできません」

 桜色の髪に蒼い瞳の魔法使いは微笑んで続けました。

「ですが、わたくしの贈り物がまだです。王女に贈られた『呪い』を変えることができますわ」

 そして、桜色の髪に蒼い瞳の魔法使いは王女の揺り籠に進み出ました。

「王女は確かに糸紡ぎに刺され、倒れるでしょう。ですが、眠りにつくだけです。王女を運命の相手が現れるまで眠るのですわ」


 王様は国中にお触れを出し、国中にあった糸紡ぎを処分させました。
 そして、十六年の歳月が流れました。


「ネオ!」


 王女はとても健やかに、魔法使いたちの贈り物の通りに育ちました。


「ステラ……。ネオ、じゃなくて、お父様、だよ」
「おとうさま?」
「っ!! ステラは本当にいい子だな〜」
「そうね、元気そうだし……投薬の副作用、大分、消えたのね」


 王女は王様とお妃様を初めとする多くの人々から愛されました。


「だから、この時は、こっちの死角から襲うんだよ」
「……うん。こう?」
「っだ! あ、危ねっ!!」


「そうだ、重心を傾けず、反動を上手く逃がして……」
「ん」
「待て、こっちに向けるな」


「そうそう、直結しちゃうとバレるから、別のところを中継して擬装して――」
「ぎそう?」
「えぇと、とりあえず、いろんなところに入って、最後に目的地に行けばいいの」


「ペダルを踏み込むタイミングが問題なのよね」
「ダメ?」
「あ、ステラは上手よ。私がね……もっと訓練しなきゃ」



「なぁ、アスラン」
「何だ」
「アレ、いいのか。私が言うのもなんだが、一国の王女が身につけるものじゃないと思うぞ」
「……自覚はあったのか」
「ん?」
「ああ、いや、こっちの話だ」



 純粋無垢なままに成長した王女は、ある日、城の片隅にある古い塔へと興味を持ちました。

 からからからから……

「……からから。なに?」


 塔の最上階まで登った王女は、そこに古ぼけた糸車を見つけました。
 今まで一度も見たことのない物に、王女は手を伸ばしました。

「あ!」

 その瞬間、糸紡ぎの先端が王女の指先が突き刺さりました。
 そして、王女は『呪い』と『贈り物』の通り、眠りにつきました。


「さあ、呪いの成就だ……って、ステラ?」

 自らかけた呪いが果たされたことを知り、現れた榛色の髪と紫の瞳の魔法使いは嘲り笑いました。

「あは、ははは……本当に寝ちゃってるよ……」

 そして、榛色の髪と紫の瞳の魔法使いが去った後、桜色の髪に蒼い瞳の魔法使いが現れました。

「まぁまぁ、こんなところでは風邪を召されますわよ」

 桜色の髪に蒼い瞳の魔法使いは魔法で王女をベッドへ移動させました。
 そして、王女が目覚めた時のことを考え、城全体に眠りの魔法をかけました。



 そして、城にいたすべての命あるものが眠りにつきました。










 王女が城と共に眠りについて、数年後。


「……え、百年じゃないんですか?」
「シン、常識で考えなさい」
「そうはいうが、タリア、常識で考えるとこの物語自体が成り立たないと思うのだが」
「……そもそも、この非常識なキャスティングの理由を聞きたいものだわ」
「か、艦長……」
「おや、私の妃役は不満かい?」
「!!」
「えぇと……議長?」
「ああ、すまない。シン、君にはすまないが、隣国まで、そこの王にこの書状を渡してくれないか」
「え、あ、はい」


 眠りに閉ざされた城に、隣国の王子が愛馬インパルスと共に現れました。


「う、わー……ホントに、皆、寝てる……」


 城の中に足を踏み入れた王子は、塔の最上階にいるという王女の許へ向かいました。

「王女を起こさないと、ここの王様も起きないってことだし……って、あっ!」

 しかし、王子の前に突然、王女に呪いをかけた榛色の髪と紫の瞳の魔法使いが現れたのです。

「何で、あんたがここにいるんだよッ!?」
「何でって……あのさ、シン、台本読んだよね?」
「っ!?」
「とりあえず、この先には行かせないよ」
「どうして、あんたは俺の邪魔ばっかりするんだよ!?」
「……いや、だから、台本」
「いつまでも、あんたの思い通りにいくと思うなよ!!」

 行く手を阻む榛色の髪と紫の瞳の魔法使いに、王子は果敢に挑みました。

「あー、うん、まぁ、いいや……」

 その瞬間、榛色の髪と紫の瞳の魔法使いが揺らぎ、瞬く間に、巨大なドラゴンに変身したのです。

「フリーダム……!!」

 王子は怯むことなく、剣を振り上げました。
 父王から与えられた、彼のために鍛え上げられた名剣デスティニーは、翼を広げるドラゴンの強固な体をも切り裂きました。

「って、シン、ちょっと止めてよね! ラクスがくれたフリーダムなのに!!」
「俺が、倒す……ッ!!」
「人の話を聞いてないし!!」

 それは恐ろしい戦いでした。
 しかし、王子は決して諦めることなく、榛色の髪と紫の瞳の魔法使いであるドラゴンと戦いました。

「待て、逃げるな――ッ!!」

「……ああ、もう、我忘れやすいんだから、シンは」

 そして、ついに王子はドラゴンを倒したのです。
 その瞬間、榛色の髪と紫の瞳の魔法使いの絶叫が城全体を揺るがしました
「えっと……おのれ、ここまで来て倒されようとは。こんなことがあぁぁぁ、と」

「ふ、ふ、は、はは……っ、やった、やったよ、ステラ、マユ……!!」

<トリィ!!>

<テヤンデェ!!>

「っ痛! 何だよ、って…………あ、ステラ!」

 王子は王女を起こすために塔に向かいました。

「ステラ!」

「…………」

「ステラ? えーと、起きて?」

 しかし、王女は眠りから覚める気配がありません。

「へ!?」

 王子は何度も呼びかけ、王女の様子を伺いました。

「ま、まさか……?」



「フ、フフフ……ステラに何かしやがったら――殺す」
「えー、べっつにどうでもいいじゃん?」
「良くない!!」


「……これは、ワンパターンすぎるんじゃないか?」
「ほほう、経験者は語るってヤツか、ん?」
「え、あ、いや、あれはだな、カガリ……!?」


「え、ウソ、シン、するのっ!?」
「そんな度胸があるのかしらねぇ」
「……ただの皮膚接触に何の問題があるんだ?」


「ふん、バカバカしい……!」
「いや、でも、美味しいじゃん?」
「……ふぅん、ディアッカ、あんた、寝込みを襲う趣味があるんだ、へぇ、初耳」
「ミ、ミリアリア!? いや、違うって……!!」


「あ〜ん、いいなぁ。ねぇ、ラクス様はどうですかぁ?」
「え、わたくしですか。わたくしは……ねぇ?」
「ダメ。何で、他の人の前で、ラクスの、あの『表情』を見せなきゃなんない訳?」


 王子は王女の愛らしさに、心を奪われました。

「って、待てよ! おい!?」

 そして、ついに目覚めの瞬間が訪れたのです。


「勝手に話を進めるな――――ッ!!」










 王女は目覚めました。


「……し、死ぬかと思った……」
「ホントにねぇ、よく生き残れたものだわ」
「シン、大丈夫?」
「すべて掠り傷だ。さすがだな、シン」
「……それ、笑って言うことじゃないぞ、レイ」


「殺す、今すぐ殺す……!!」
「あははは、マジでやった、やりやがった〜!」
「笑い事じゃないぞ、アウル!!」


「……このセットの損害賠償はプラントに回すぞ」
「カガリ、もっと他の言葉は」
「された方の立場からなら言えるが……?」
「っ!」


「あらあら、皆さん、楽しそうですわねぇ〜」
「え、あ、あの、た、楽しい、ですか?」
「うん、皆、生き生きとしているよねぇ〜」
「はい」



「……だれ?」
「え、あぁ……ステラ、俺だよ。シン。覚えてる?」
「しん。……シン?」
「うん」
「シン!」


 そして、王女が目覚めたことに気付き、桜色の髪に蒼い瞳の魔法使いが現れました。

「さあ、皆様、そろそろお起きになって下さいな」


「ステラ――っ!!」


「え」

「ステラ、良かった! 起きたな!」
「ネオ……あ、おとうさま……?」
「そう、そうだ!! ステラはいい子だ」


 王女の目覚めを王様はとても喜びました。


「……えぇと、シン、大丈夫?」
「たんこぶできていますわね」
「……っ! 何で、まだアンタがいるんだ!?」
「え? ああ、ほら、僕のラクスへの愛は不滅だから」
「訳分かんねぇこと言ってんじゃねーよッ!!」
「まぁ、大変。八つ当たりはいけませんわ」
「証拠、見せようか? ほら、ストライクフリーダム」


「フ、フリーダム、倒す……!」

「――今度は負ける理由がないからね、手加減はしないよ?」



「そこの!! やってしまえ!!」
「キラぁ、頑張れ!」

「応援、ありがとう、アウル」
「って、爽やかに言うな、このバカ弟!! 外交問題になるだろうが!!」
「外交問題!? 突っ込むところはそこなのか、カガリ!?」


「はんっ、キラ・ヤマトを倒すだと!? 貴様には十年早いわッ!!」
「そうだよな〜、イザーク、お前も一勝すらしてないもんな!」
「煩い、うるさーいッ!! 黙れ、ディアッカ――ッ!」




 城は一気に活気を取り戻しました。




「…………付き合ってられないわ」
「全くね」
「あら、グラディス艦長。どうして、こちらに?」
「いい加減、タヌキの茶番に付き合うのも限界があると思いません?」
「あぁ……そうですわね。私も、そろそろ仮面には限界でした」
「奇遇ですわね」
「ええ、全く」


 王様は王女を目覚めさせてくれた王子に感謝し、歓迎しました。


「やあ、エースくん? うちのステラが世話になったようで」
「や……顔笑ってないんですが」
「何、気のせいだ」

「ネオ、そこだ、やっちまえ!」

「……あの、俺、これ届けに来ただけなんで」
「ん? 何々……っ!?」

「えー、ネオ、どうしたんだよ?」



「す」



「す?」



「ステラは嫁にやらんぞ――――ッ!!!」







 めでたし、めでたし……?













 眠り姫……………………………ステラ・ルーシェ
 王様………………………………ネオ(ムウ・ラ・フラガ)
 王妃………………………………マリュー・ラミアス

 魔法使い1………………………アスラン・ザラ
 魔法使い2………………………カガリ・ユラ・アスハ
 魔法使い3………………………アウル・ニーダ
 魔法使い4………………………スティング・オークレー
 魔法使い5………………………メイリン・ホーク
 魔法使い6………………………ルナマリア・ホーク
 魔法使い7………………………レイ・ザ・バレル
 魔法使い8………………………イザーク・ジュール
 魔法使い9………………………ディアッカ・エルスマン
 魔法使い10……………………ミリアリア・ハウ
 魔法使い11……………………ミーア・キャンベル
 魔法使い12……………………ラクス・クライン

 招待されなかった魔法使い……キラ・ヤマト

 王子………………………………シン・アスカ
 隣国の王…………………………ギルバート・デュランダル
 隣国の妃…………………………タリア・グラディス

 監督………………………………アンドリュー・バルトフェルド














 ナレーター………………………ウズミ・ナラ・アスハ(特別出演)






                     終幕










「――――カットぉぉぉッ!!」



 バルトフェルドの掛け声に、ダコスタが続く。
「はーい、クランクアップでーす。皆様、お疲れ様でした〜」
 瞬間的に、カガリは我に返った。
「って、待てよ、おい!! 今、今の最後のテロップ……!!」
 そのまま、カガリはダコスタに詰め寄った。
「アレ、アレ……!!」
「お、落ち着け、カガリ!」
「バカアスラン、落ち着いていられるか!! お、お父様だぞ、お父様!!!」
「おとうさま……?」
 きょとんと瞬いて、ステラに見上げられ、ネオは苦笑した。
「いや、ステラ、俺のことじゃないぞ」
「というか、ステラ、ネオが父親だったら、ろくでもないから、止めろ。な?」
 穏やかにスティングに言われたステラは少し考えて、こくりと頷いた。
「スティング……。うん、わかった」
 その瞬間、ネオが固まった。
「ス、ステラ!?」
 そうしているうちに、カガリの詰問はバルトフェルドに移っていた。
「バルトフェルド隊長!! どういうことか、説明してもらおうか!!」
「ん〜、いやいや、俺はテープを受け取っただけだぞ?」
 からりと笑って流され、カガリは拳を握り締めた。
「誰から!?」
 アカツキ受領の時の様に、予め、この事態を予測して残しておくなんてことができるはずがない。
「さて?」
 軽く肩を竦めて、バルトフェルドはダコスタを見やった。
「あれはどこの誰だったか?」
「さぁ、あまり、見かけない女性でしたよね。その割には、こちらのことはよくご存知みたいでしたが」


「誰だ、そいつは――!?」






「……あの方、でしょうか」
「うん、たぶんね」
 そして、キラとラクスは小さく溜め息を吐く。
「やらなきゃならないこと、他にもたくさんあるはずなのにね……」
「また、追い込まれますわね、きっと」


「バカだよねぇ」
「ですわね」


「えー、何、バカって、コイツのこと?」
 その瞬間、アウルが指した少年に、キラは表情を引きつらせた。
「シ、シン……」
 かなり、シンはボロボロになった衣装を纏ったまま、激しく落ち込んでいる。
 ややあって、沈痛な顔をしたアスランがポンと肩を叩いた。
「シン、気にするなと言っても無駄だろうが、お前のせいじゃない」
「アス、ラン……」
 赤い瞳を潤ませて、シンは見上げた。
 アスランは静かに微笑んで頷いた。
「そうそう、肝心のステラは何があったか分かっていないし、アスランの時よりマシだからね」
「キラ!?」
 キラの言葉に、シンの表情が固まった。
「アスランの時って……え?」
 そして、驚愕に双眸を見開いて、シンはアスランを凝視した。
「…………アスラン?」
「いやッ、シン! 違う、あれはだな!」
 咄嗟に、否定しようとするアスランの横合いからラクスは口を挟む。
「証拠物件、ありますわよ?」
 そして、白く細い手が掲げて見えた一枚のメディアに、アスランは絶句した。
「ええっ、ラクス様、アスランさんもやったんですか!?」
 目を輝かせるメイリンに、ラクスはにこりと微笑んだ。
「ええ、シンと同じ王子役でしたわ」
「ラクス!!」
 我に返ったアスランが叫ぶが、薄紅の髪の少女は全く動じた様子はなく、話を続けた。
「題目は『白雪姫』。白雪姫はカガリさんでしたわ」
「ええ〜、じゃあ、アスラン、次はあたしの相手をして!」
「ミーアッ!!」
 冗談は止めろとアスランは叫んだ。
「……へぇ、アスラン、もてるんだねぇ」
「キラ! 何を言っているんだ、お前は……!!」
「べっつに〜?」
「あ! もしかして、キラさん、ヤキモチですか!?」
 不意に閃いたように、メイリンが告げた言葉に、ラクスは苦笑した。
「まぁ、嫌ですわ、キラ」
 そして、ラクスは顔をしかめているキラを宥めるように、そっと手を重ねる。
「どんなにミーアさんがわたくしに似ていても、わたくしではありません」
「ラクス」
「違いますか?」
 ふわりとラクスが微笑んで尋ねると、キラはゆっくりと表情を和らげ、頷いた。
「……ううん、そうだね。ラクスの言うとおりだ」
 そして、キラはアスランに向き直る。
「アスラン、ごめん」
「え、あ、いや……」
「僕が何か思う理由なんてなかったんだよね、うん。思う存分やっていいから!」
「って、違うだろう!?」
 思わず、アスランは突っ込んでいた。
「そうじゃない、そうじゃないだろう、キラ!?」
「そうだ、問題はそこじゃない!!」
 突然、割り込んできた声に、キラたちは振り返った。
「あ、イザーク。それにディアッカ」
 よ、と軽く手を上げてディアッカは挨拶した。
 そして、ディアッカはそのままミリアリアのところへ行く。
「お疲れさん」
「……」
 しばし、笑顔のディアッカをミリアリアは見つめ、おもむろにキラに向かって告げた。
「キラ、私、仕事があるから、もう行くね」
「あ、うん」
「って、おい、ミリアリア!?」
 そのまま、スタスタと歩き去るミリアリアを追いかけるディアッカに、キラは乾いた笑みを浮かべた。
 あの二人は相変わらずらしい。
「キラ・ヤマト!!」
「え」
「何故、貴様がラクス・クラインとそこまで親密なんだ!?」
 怜悧な容貌が更に鋭く、烈火のごとく激しくイザークは詰め寄った。
 しかし、イザークの剣幕にも、キラとラクスは平然と応じた。
「あ、そこを突っ込むんだ?」
「まあ、お久しぶりです、お二方とも」
 そして、キラは隣のラクスに尋ねた。
「僕とラクスが仲良しなのは、今に始まったことじゃないよねぇ?」
「……えぇ、そうですわね」
 何故か、白い頬をほんのりと朱色に染めるラクスに、イザークは絶句する。
「さすが、伝説のフリーダムのパイロットって言っていいのかしら……」
「バカバカしい。キラ・ヤマトという存在が問題であるに過ぎない」
「……レイ、貴方って本当に、あの人のこと嫌いなのねえ」



「キラ・ヤマト、貴様、そこに直れ――――ッ!!!」






オマケ


「そういえば、先日、美味しいお店を見つけたんです。これから行きません」
「あら、いいわね。あ、でも、子連れでもいいかしら」
「私は構わないよ」
「貴方には聞いていません」





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