LOOK


月読 遊様



 その虹色にきらめくシャボン玉は、コートの裾に触れるかどうかの距離を漂うように浮かんでいた。
 顔を上げ視線を向けると、自分の想い人がその場に座り込んで幼い子供のように次から次へとシャボン玉を作って遊んでいた。

「すっかり気に入ったようだな」

 笑いながら声をかけると、すぐさま弾んだ声音が返ってきた。

「うん。だって綺麗だから」

 呼びかけに応えはするものの、振り返りもしてくれない。宙に舞うシャボン玉を熱心に眺める相手の様子に苦笑しながらその隣に腰を下ろし、相手の横顔に目を向けた。
 余程気に入ったのか、先程からシャボン玉を作っては飛ばし飽きもせずに眺めている。

 その様子に微笑ましさを感じながらも、一方で不満もあった。
 相手は虹色の球体に目を奪われて、自分の方に顔も向けてくれないから。
 そっと手を伸ばし、相手の顎を軽くつかんでその顔を自分の方に向けさせた。

「どうかした?」

 突然触れた指先にほんの少し驚いたように小首を傾げ、問いかけた相手の言葉には答えず、その唇を自分のそれでふさぐ。

「……俺が居る時は俺だけを見ていてくれ、というのは我が儘か?」
 触れるだけの軽い口づけの後、言葉になって転がり出た想いには嫉妬の色が強く、口にした自分でも意外に感じた。
 云われた言葉に、相手は小さく首を傾げて瞬いた。

「……怒っているの?」

 きょとんとした様子で訊かれて、自分の狭量さに気付く。

「怒っているわけじゃない」

 相手の問いかけを否定しながらも、先程の発言を少し恥ずかしく感じて思わず顔を背けた。
 けれど、相手は座り位置を変えて背けた顔を覗きこんできた。
 間近に迫った眼差しには困ったような表情が感じられて、ますます先だっての自分の発言が悔やまれた。

「悪かった。大人気なかった」

 自分の言葉を後悔しつつ謝罪の言葉を紡いだ。
 その言葉に相手はほんの少し眉根を寄せた表情のまま、顔を横に振った。そして、その華奢な掌がそっと頬に触れてきた。

「この目が他の何を見ていても、私の心は……」

 触れそうなほど間近に顔を寄せて、相手は優しい笑顔を浮かべると、そっと唇を重ねてきた。

「たった一人しか見ていないから――」

 相手のそれが離れたばかりの唇に、甘い囁きが直接触れる。

「……ああ。知っている」

 まっすぐに自分に向けられる眼差しに、先程感じた他愛もない妬心は容易くかき消される。
 そして自分の頬を包む相手の小さな手に、自分の手を重ね、微笑んで言葉をつなげた。

「俺もだよ―」


 そして二人は再び互いの唇を重ねたのだった――。










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作者様コメント

銀月嬢、サイト開設おめでとうございます(^_^)
サイト名を聞いて思いついた作品なのでつまらない物ですがお祝いに。

二〇〇二年如月某日


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管理人コメント

素敵な話を戴いてしまいました。
しかも、サイト名から思いついたものですって<きゃあ〜///

シャボン玉とか虹とか儚く綺麗なものって好きです。
花や夢、硝子も心惹かれます。
サイト名の『泡沫の城』はそーゆーものを全部ひっくるめたつもりで決めました。

……にしても、甘い話です。
自分で書いてる分には全然平気ですけど、人様の話は照れますね〜。

月読 遊様、ありがとうございました。
このお礼はいつか!!





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